19回全国大学書写書道教育学会・徳島大会


20回記念「書写書道教育学の歩みと課題」に連なる

ラウンドテーブル


 本資料は、2004.10.09 四国大学交流プラザにおいておこなわれた書写書道教育学会・徳島大会におけるラウンドテーブルの概要を掲載するものです。

テーブル1〜4の話題内容について




テーブル1:書写・書道の学習内容論・教材論などについて


 かつて書き方・習字において、いわゆる手本そのものが教材であったといってもよいだろう。その手本を学習するにあたって注意すべき点が整理される時代を経て、手本などに内在する学習内容を顕在化させる作業がおこなわれてきた。その作業の過程の多くが、本学会の歴史と共に進められてきたといってもよいだろう。それは、各個人の研究に加え、書字学(仮称)研究会によって進められてきた。一方、書道の学習内容や教材に関する論考は比較的少なかったと考えられる。

 20周年にあたり、書写の学習内容について未だ検討されていない領域はないか、不十分な領域はないか、また、教材化についての確認作業が必要であろう。書道教育の学習内容論・教材論についても、同様である。特に、書道においては漢字仮名交じりに関する部分などがそれに該当するのではないだろうか。



テーブル2:教育課程と書写・書道


 現在、国語科書写と芸術科書道の関係は、連続する関係構造として把握するのが一般的である。高等学校学習指導要領にも「書写能力を高め」という文言があるように、教育課程上でも同様である。これは、両者が「文字を書くこと」に関わる内容の学習であるという把握レベルで共通しているからである。しかし、教科の理念・目標というレベルから問い直すと、書写は国語科の、書道は芸術科のそれぞれ異なる理念・目標のもとで行われるのであり、教育課程上の連続は矛盾しているという見方もできる。

 テーブル2は、これからの時代の教育課程のあり方を検討する場であるが、まずは教科の理念・目標というレベルからこれまでの教育課程を再検討してみたい。その上で、これからの時代を視野に入れながら、複数の目標観とそれに沿った複数の教育課程のイメージモデルを提示して、それぞれの妥当性を協議していきたい。



テーブル3:学習者研究とそのあり方


 教育史によれば、日本において、「授業」が本格的な研究の対象となり、成果が生み出されるようになったのは、第二次大戦後であるという。

 その授業研究の歩みでは、教育内容、教材、教授行為、学習者の、それぞれに焦点をあてた研究が探究されてきた。ただし、教育内容、教材、教授行為に比べ、学習者についての言及は断片的で、現段階ではまだ理論としてもつべき範囲や体系が明らかになっていない、という。しかしながら、同時に、学習者の学びの仕組みから授業を捉えることが、教育内容、教材、教授行為の研究に示唆するものが多いことも指摘されている。

 本テーブルでは、書写書道の領域では、どのように学習者研究が進められ、どのような成果をあげているのかを確認したのち、どのような課題があるのかを展望し、臨席の会員とともに着手していくことのできる研究テーマ及び研究方法を話し合うこととする。



テーブル4:授業研究をどのように進めるかについて


 話題の前提として、これまでの書写書道教育研究に授業研究の成果がどれぐらいあったのかを問うとすれば、残念ながら非常に乏しかったといわざるを得ないであろう。

 教育研究における授業研究は、授業を分析する、授業を検証する、授業を成り立たせる要素を見すえるといった方法により、授業そのものを研究対象として理論構築を図る研究領域である。書写書道教育研究では、学習指導過程や学習指導方法の理論について一定の成果はあるものの、その分析的な検証や実践からの理論構築は必ずしも進んでいるとは言い難い。研究方法の開発も視野に入れ、授業研究の充実を図ることは喫緊の課題である。

 テーブル4では、書写書道教育研究の現状とあわせ、授業研究の意義や方法について確認し、参加した方々と意見や情報を交わしながら、今後の研究の指針や枠組み等について考えていきたい。また、組織的な研究の方向性についても具体化できればと考える。