テーブル1
「書写・書道の学習内容論・教材論などについて」

概要報告



  1. はじめに
  2. 最初に、担当者が事前説明をおこなった。押木は、理論面よりテーマに関するこれまでの成果を[項目・規則性・合理性・汎用性・他領域との関連]の視点で整理し、課題について述べた。樋口は、[基本的問題・字形や字体の基準・毛筆に関係する問題・動作や運動・時代や環境]などの視点から、現実的に発生している課題等について述べた。(別紙資料)次に、出席者の持つ問題意識について自己紹介を兼ねて述べる時間を取った後、話し合いをおこなった。ただ、時間配分から十分議論ができなかった点は、担当者としてお詫び申し上げたい。

    以下、出席者から出された意見等の概略について記す。まとめにあたって、類似の発言については一つにまとめたが、その際発言者の意図が正確に反映されていない場合があるかも知れない。この点についても、お断りしお詫びしたい。


  1. 言語の伝達という面を主として

  1. 非言語的な要素も含めた内容について

  1. 書道教育の内容論・学習論について

  1. 教材化と授業との関わりから

  1. その他



補遺 (アンケートも参照した上でのまとめ)


ラウンドテーブルにおいて、十分なまとめの時間を取ることができなかったが、アンケートの記述の参照も含め、担当者の見解として、内容は以下のようにまとめられると考える。

各自の問題意識として提示された内容に多く共通する点として、言語の伝達という機能以外の部分の明確化ということがあったように思われる。特に情報機器が普及する中で、手で書くことによって生じるコミュニケーションにおける作用・学習や精神面での効果などを重要視する意見である。従来の芸術的な発想に加え、新たな視点からも、これらについて立証することが必要であると感じられた。

討議において出された話題として、言語の伝達という機能においても、文字について視覚的な側面のみに着目されている現状についての意見が見られた。見た目において正しいかどうか、見た目において整っているかどうかという点のみを重視しているのではないか。たとえば、字が汚いことのイメージや、行書の問題などがそれであり、行書=崩す=読みにくいという意識の問題があることなどが話題となった。この現状に対し、「行書」という意識から「速書き」という意識への転換なども述べられた。担当者としては、従来の視点からは行書、また別の視点からは書く行為における動きという面や、身体の動作という面の学習内容化のための研究が必要であると感じられた。

また討議において、教科書教材の具体的問題が話題にのぼった。主として姿勢や持ち方の写真などについて述べられたものであるが、この点はいまだ教材が「写真」であり学習活動と結びついていないという問題としてもとらえられる。一方で、これまでの本学会における学習内容に関する研究成果の整理と確認作業をおこなうとともに、実際の教科書教材を検討する作業の必要性を示しているとも考えられるだろう。

多くの問題提起がなされたラウンドテーブルであり、いずれも重要な問題であることが確認されたが、その中でも以上の点から、担当者として次の3点をまとめとしておきたい。


  1. 文字を書くことにおける、言語の伝達・記録という機能以外の要素についての明確化とその立証が必要である。

  2. できあがった字に着目する学習活動から、(従来の行書や筆脈への着目なども含めた)字を書く動作や行為に着目した学習活動を重視する方向性は、速書き・文の中で文字を書くこと・身体活動性・表現等の各場面において必要なことではないか。だとすれば、その学習内容化が必要なのではないか。

  3. 本学会における学習内容に関する研究成果の整理と確認作業をおこなうとともに、実際の教科書教材を検討する作業をおこなうことは、効果があるのではないか。


担当:押木秀樹・樋口咲子