「ラウンドテーブル2:教育課程と書写・書道」概要報告
参加者:25名
話題提供者:松本仁志(広島大学)・東賢司(愛媛大学)
本テーブルの進め方の説明
話題提供者(松本・東)よりラウンドテーブルを設定するようになった経緯、このラウンドテーブルについての位置づけについて説明があった後、次の2つの柱のもとで自由に討議を進めることを提案した。
<話題1:これまでの教育課程を振り返る−「学習指導要領」の成果と課題>について
*提出された主な意見
- 昭和43年版学習指導要領における毛筆必修化以降の「光と影」について。毛筆書写が全国で広く行われるようになったことは「光」、作品主義的書写指導が広まったのは「影」。
- 平成元年版では35単位時間(小)平成十年版は30単位時間(小)と、これまでの書写は、毛筆に負ぶさってきたところが大きい。今後は内実に迫るあり方が必要になってくるであろう。
- これまでの学習指導要領では、毛筆を硬筆に近づけようとする傾向があった。
- 学習指導要領以前に、教員養成における指導者の育成が重要。ともに改善されなければ書写教育をめぐる問題は変わらない。
- 現行の書写の柱はなくなってしまうのではないか。もっと、柱を立てて主張していかないと、英語教育の小学校への導入によっても時間が更に削られてしまう。それを危惧している。
- 書写書道教育の担当の立場ということを外して考えた場合、本当に書写書道教育が必要であると考えているか、一人一人に聞いてほしい(自問してほしい)。
- 芸術書道の場合、鑑賞力の育成が不足しており、いつまでもお稽古ごとから脱却できない、創作力の育成が重要といいながら、鑑賞教育を通した内容の深化が足りない。次のステップに進めない部分がある。
- 毛筆は硬筆のためにということでこれまで取り組んできたが、硬筆と毛筆の関連のあり方を見直す時が来たのだという思いが強くなってきた。
- 「漢字仮名交じりの書」を必修とすることはおかしい。
<話題2:これからの教育課程を考える−これからの時代にいかに対応していくか>について
*提出された主な意見
- 書写教育と書道教育とは切り離して考えていくべきであろう。
- 日本人としてのアイデンティティの育成を目標に置いてこれからの書写書道教育を考えるのは危険である。
- 6・3制がどうなるのかわからない今、子どもたちに付けたい力は何かを発達段階にそって明確にすることが肝要である。
- これからの時代を考える際にも、子どもが何を望んでいるのかを把握するという視点が必要。
- 小学校低学年から文字の美的感性を育成するのは、子どもの実態に即していない。小学校の教育現場では評価することはかなり難しい。
- 臨書学習をしなくても書道はできると考える。学習者の主体性に任せて、何をどういう風に書いてもよい、漢字の書・仮名の書・漢字仮名交じり書の枠を廃止して子供が書きたいものをなんでも書かせるというのはどうか。一方的に臨書しようとすると、主体性を阻害することになる。
- 毛筆は重要、時間増が求められる。毛筆は小学校1年生からやってよい。硬筆の持ち方が悪いことから考えても、毛筆は硬筆の基礎という方向性は正しいのでは。
- 縦書きの重要性を見直すべき。
- PC関連の漢字のデザイン等にも書写書道関係者が積極的に関わる必要がある。
- 漢字仮名交じりの書の学習にあたって、漢字(古典)を学ばないで書かせることは反対。
- 「生活に生きる書写は姑息な考え方だ」と指摘されたことがある。文字を書く楽しさを全面的に押し出した学習を考える必要があるのではなかろうか。