テーブル3 学習者研究とそのあり方

進行・世話役:鈴木慶子(長崎大学)、谷口邦彦(安田女子大学)

学習者研究の重要性

 日本において、「授業」が本格的な研究の対象となり、成果が生み出されるようになったのは第二次大戦後であるというが、教育内容、教材、教授行為、学習者の、それぞれに焦点をあてた研究が探求されてきた。松下佳代(1995)は、藤岡信勝の言を例にあげて学習者の学びの仕組みから授業を捉えることが、教育内容、教材、教授行為の研究に示唆するものが多いことを述べている。また、国語科でも90年代以降、学習者を対象として、国語の学習はどのような事態なのかという観点から授業研究が進められていることなどを紹介しながら学習者研究の重要性について述べた。 


【意見】


授業段階ごとの学習者研究

 世羅博昭(2001)は、学習者研究の視点として授業の構想段階、展開段階、評価段階の各段階ごとに、学習者を捉えることが必要だとしている。このことを踏まえ、鈴木・谷口が各段階に考えられる視点を提案した。また、文字を書く能力の発達に関して小中学校段階でどのように伸びていくのか、どのように伸び悩むのか、それらの原因・背景は何なのか、さらにその発達の度合いにどのような特徴が見られるのか等の視点を示した。

【意見】


主体者としての人間(発達)研究

 医学やスポーツの世界では、年齢、性差、職業、居住地などの違いによる体力、及び器官や臓器の機能性の程度を把握している。そして、そのものさしに即して、体力があるとかないとか、体内年齢が若いとか老けているとか、をいうことができる。これに引き当てれば、文字手書きする主体者として、手書きされた文字を受容する者として、書表現をする主体者、書表現を鑑賞する主体者としての、人間の(発達研究)が考えられることを提案した。

【意見】


『書写書道教育研究 』にみる研究の視点の推移

 当学会の紀要によって、学習者研究、手書き文字を書く主体者としての人間の(発達)研究の視点を含んでいるものを拾い、一覧で示した。学習者の発達と指導内容の関係を検証しようとするもの、書写指導法と学習者の認識活動の関係を明らかにしようとするもの、手書き文字の測定法に関するもの、手書きする際の手指の動きや力、視力の関係に着目しようとする等の研究が行われている。その結果、学習者を捉えようとし、枠組みを組み立てようとしている気運はみられるが、[学習者]を徹底的に把握し、それをふまえた授業作りは未だ行われてはいない。 

【意見】