ラウンドテーブル4
「授業研究をどのように進めるかについて」
概要報告
進行世話役:青山浩之(横浜国立大学)、齋木久美(茨城大学)
参加者:24名
はじめに、進行世話役からラウンドテーブル4の趣旨を説明し、書写書道教育における授業研究の現状等を踏まえながら、以下の3つの柱に基づいて自由に討議することを提案した。それぞれの柱における話題の提供は、当日配布した資料に基づき、討議の中で随時述べた。その概要と、討議の中で出された主な意見を以下にまとめる。
1.授業研究とは(目的と方法)
話題提供:
教師は実践者であるとともに授業研究の主体者である。授業研究について「観察と記録」「記述と分析」「反省と批評」といった手順などを確認し、実践を振り返ることから話し合いを始めたい。
主な意見:
- 「授業研究」の捉え方について、一定の研究レベルで考えるより、まずは日々の授業実践自体が研究であるという視点を持つことが必要。
- 授業を記録することで、結果だけでなく、授業内の気づきなど、過程も重視する視点が持てる。(技能面で結果が見られなくても、ことばや行動から理解していることがわかるなど。)また、振り返りや改善にもつながる。
- 何を観察し、何を記録するのかが重要。
- 授業をフォーマットで見る傾向が強い。子どもの反応を見ていない。
- 授業研究は、本来、研究のための研究ではなく、子どもの達成感など、学習者へのまなざしが先行すべきではないか。そのことが、教師自身の達成感にもつながる。
2.授業研究を通して何を考えていくのか
話題提供:
授業は教師個々の実践である。教師の個性を尊重しながら、共同の研究を経て、再び個々の実践に返すことが授業研究の基本といわれる。では、実践事例の検討などを通して、教室の出来事を質的解釈的に探求するために、何を考えていけばよいのだろうか。
主な意見:
- 形式は整っていても温度が低い授業、そうでなくてもうまくいっている授業がある。経験則ではなく、見える形にして共有していくことが必要だろう。
- とかく名人芸のような授業を考えがちになるが、教師一人ひとりがねらいを持って、他者の授業から学ぶことが大切なのではないか。
- 書写書道の授業実践例は、求めようとしても多くを得られない現状がある。授業記録をとり、授業研究の形にすることで、無意識のところを顕在化したり、他者との共有を図ったりすることが求められる。
3.授業研究をどう進めていくのか(研究のフレームも含めて)
話題提供:
授業研究は指導方法などを主たる研究対象とする向きがあるが、同時に教科内容、学習者、教師自身も対象化して捉えていく必要があるだろう。そういった広い視野から共有化、一般化を図っていくためにも、今後どのように授業研究を進めていけばよいのか。
主な意見:
- 書写書道教育でこれまでも行われてきた「研究授業」は、実質的に「授業研究」になっていなかったのではないか。「反省と批評」を質的にもっと高める必要がある。
- 書写でいえば、国語との連携で授業研究を行うべき。例えば、国語担当者全員で授業を見合うことで、授業を高めるだけでなく、国語と書写の内容を共有したり、分担したりできる。
- 教科書や指導事項に合わせた実践や報告が多いが、もっと本質的に問い直し、テーブル1とも関わらせながら、今日の書写書道教育に求められる内容に即した授業研究を進めることも必要。
- 子どもの人間形成に関わる書写書道教育の授業研究を考えていく。教師は子どもを見る目を持つ必要がある。(学習者研究とも関わる。)
- 書写書道では、とかく技能重視になりがちだが、教師の教材理解が問題だろう。教材をきちんと理解し、それを学習者にどう伝えたかが重要である。学習者に、達成感や学びの喜びを伝えられたかという立場で授業研究を考えたい。
- 教科書のあり方も含め、何を伝える授業なのかを、授業研究の中で考えていく。
- やはり、教材や教科内容、これまでの教科課程、学習者や教師の問題全般で捉えていく必要がある。
- ともすると文字を書くことの意義を忘れがちになる。字形などを覚えること(書写学習)と、いろいろな場所で書くこと(書字活動)は相互作用で高まる。例えば他領域や総合学習などでも書写に関わる部分の授業研究が必要。
- 実践例を公開、共有することが少なすぎる。例えば、「授業実践アイディア集」のようなものがあるとよい。HPなどで共有していくことも考えられる。
- それぞれの実践が集められるだけでなく、それらについて語り、共有したり、あるいは競合したりする中で授業を高めていくための場づくりが必要。
- 仮説の設定をして一般化したり、事例の中から典型性を見いだしたりする場として、学会が機能していくべき。このラウンドテーブルを一つのアクションとして、今後も意見交換が進むとよい。