The All Japan Association of College Shosha-Shodo Education

全国大学書写書道教育学会 出版物案内

『明解 書写教育』


Top Page



「まえがき」より

 本書は、小・中学校の教職を目指す人々はもちろん、現に教壇に立っている教員にとっても、また社会において文字を書くことに関わっている関係者にとっても、必携の書とされるよう、当学会の衆知を集めて編纂したものである。
 当学会では平成二年に、『書写指導・小学校編』及び 『書写指導・中学校編』を刊行し、以来、改訂等を重ねてきた。本書は、これまでの成果を生かすとともに、従来の内容を検討し、これからの時代に即したものとして再出発することを企図して、全面的に書きあらためたものである。折しも平成二十年三月、幼稚園・小学校・中学校の学習指導要領が改訂・告示されたが、その内容にも十分に対応するよう、特に教育の現場において必要とされる考え方や授業づくり等に関する内容の充実に努めた。また、この改訂に伴い、小・中学校の書写が国語科の一領域として「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」に示されたことに伴い、従来の理論と実践および資料編等の見直Lを行い、内容を一層精選するとともに、印刷も二色刷りとして要点の視覚化・焦点化を図るなどして、より具体的に明示することとした。書名に「明解」と冠したゆえんである。
 本書の編纂に当たっては、学会内に編集委員会を組織して、最新の知見に基づいて基本的な方向を決め、分担して執筆した。現時点で最善を尽くしたが、昨今はきわめて変容の激しい時代であり、今後の課題として検討すべき事柄もあることは否めない。これからも内容の改善に努め、常に時代の先端を行くものにしたいと思っている。本書の効果的使用によって、文化と伝統を支える文字教育の一環としての書写教育上に、新たな機軸が展開されていくよう願ってやまない。
平成二十一年三月
全国大学書写書道教育学会 編集代表 加藤祐司

各編の概要について


T 総 論

 「総論」は、書写教育にあたっての基本的な考え方を理解することで、「授業理論」と「指導内容」の各編を結びつけ、本書を有効に使ってもらうことを意図しています。
 手で文字を書くことは、長い歴史の中で変わらない重要な文化の一つといえるでしょう。一方で、日常当たり前のように用いるものであることから、時代に即したものであることが求められます。これから教師になる人たちが、現代における手で書くことの重要性を理解し、指導にあたってくれるよう配慮しました。
 新学習指導要領の趣旨を踏まえ、書くことの目的・字形等・動作等の視点によって学習内容の概略を確認するとともに、学習指導の基本構造を示しています。

U 書写授業の理論と実際

 「U」は「1 授業づくりの要点と方法」及び「2 授業づくりの実際」というシンプルな構成である。
 「1」では、書写授業を構想・実施していく上での要点と方法を、設定した六項目(目標、計画、方法、教材、評価、授業研究)について、それぞれ原則見開き二ページで簡潔に述べている。分量不足からくる物足りなさはあるが、説みやすいものとなった。
 「2」では、新学習指導要領の内容にそって、小学校一年から中学校三年までの全学年を、計十六の授業案例で網羅しており、これまで以上に充実したものとなっている。また、基本的な授業展開例のみではなく、様々な展開例を提示しているので、教育実習を控えた学生のみならず現職の教員にも参考となろう。

U 指導内容編

 「V 指導内容編」 では、文字と書写の歴史についての項目を新たに設けました。いわゆる許容される書き方についても、現場の具体的な疑問に答えられるものにしました。また、多様な筆記具を使う書写活動に対応できるよう、硬筆筆記具の種類や執筆法の説明を増やしました。場面に応じて筆記具と書体を選択して書いた実用書式例も多く掲載しました。毛筆実技の頁は、二色刷りを生かしたわかりやすい図解になっています。「楷書」では、基本点画の解説を詳しくし、字形を整える原理・原則もわかりやすく示しています。「平仮名」教材の充実や、「行書」・「文字の大きさと配列」教材の精選などで、頁数を減らしつつも効率tけいに学習が進められるようになっています。

W 資 料 編

 資料編では、書写の授業担当者に必ず目を通しておいて頂きたい項目を載せることを心がけました。多くは「指導内容編」などの記述と連動する形で組まれており、随時参照することにより知識を確認したり、深めたりできるようになっています。
 学習指導要領抄録では、移行措置期間という現状を踏まえ、新旧が対応して見られるようになっていますし、掲載する教科書体活字にも配慮しました。また、常用漢字や人名用漢字は追加や追加候補を補い、仮名の変遷もより正確に分かりやすく示してあります。字例も本書のための新たな書き下ろしで、様々な場面で有効に活用されることが期待されます。

目次


まえがき

I 総 論

    1 手書きすることの意義とその教育
    2 書写の学習指導の考え方

U 書写授業の理論と実際

    1 授業づくりの要点と方法
    1. 授業づくりの基本認識
    2. 授業のねらいと学習指導計画
    3. 子どもの実態に即した授業展開のあり方
    4. 子どもに力をつける教材研究のあり方
    5. 子どもに還元される評価のあり方
    6. 授業改善に生きる授業研究の方法
    2 授業づくりの実際
    1. 小学校低学年の学習指導案
    2. 小学枚中学年の学習指導案
    3. 小学校高学年の学習指導案
    4. 中学校の学習指導案

V 指導内容編

    1 文字と書くことの基礎
    1. 日本語表記に用いる文字と書写の歴史
    2. 小・中学校における指導の際の標準字形と筆順指導の考え方
    2 姿勢と筆記具の使い方
    1. 姿勢
    2. 筆記具の持ち方(執筆法)
    3. 用具・用材とその扱い方
    3 平仮名・片仮名
    1. 平仮名の特徴と基本
    2. 片仮名の特徴と基本
    4 楷書
    1. 楷書の特徴と意義
    2. 楷書の基本的な点画と書き方
    3. 字形T(要素と全体の整え方)
    4. 字形U(点画の組み合わせ方)
    5. 字形V(部分の組み立て方)
    6. 筆順
    7. 許容される書き方
    8. 文字の大きさと配列
    5 行書の学習
    1. 行書の特徴
    2. 基本点画の書き方
    3. 行書の筆使いと字形
    4. 行書と仮名の調和
    5. 文字の大きさと配列など
    6 生活に生かす (実用的な書式等)
    1. 原稿用紙に書く
    2. 和封筒の書き方
    3. はがきの書き方
    4. 手紙文を書く
    5. 白紙にメモを書く(伝達メモ)
    6. 横罫線に書く
    7. 掲示物を書く

W 資料編

    1. 小学校学習指導要領・国語(書写)抄録
    2. 中学校学習指導要領・国語(書写)抄録
    3. 文字と書体の変遷
    4. 平仮名と片仮名の教科書体活字、明朝体活字の例
    5. 漢字の字体と筆写の楷書(許容される書き方)
    6. 学年別漢字配当表(小学校)
    7. 学年別漢字配当表以外の常用漢字および追加候補・人名用漢字
    8. 平仮名の字源
    9. 片仮名の字源
    10. 楷書に調和する平仮名・片仮名
    11. 行書に調和する平仮名・片仮名
    12. 伝統的手習い教材
    13. 筆順の原則とその指導の考え方
    14. 筆順の原則
    15. 行書学習のための一覧
    16. 小学校国語科における「書写」の位置づけ
    17. 中学校国語科における「書写」の位置づけ
    18. 小・中学校「書写」の授業時数

あとがき